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ダーウィンの日記1835年1月7日 [ダーウィンの日記]

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コルコバド

ダーウィンの日記(チョノス群島北部; ロー湾)

[日記仮訳]

(1835年1月)7日

夜の間走り続けた。フランスの船がかなり執拗にこちらを追いかけてきた。あちらは私たちがなんらかの停泊地に向かっていると思い込んでいたのだ。このような風下に海岸がある時においては、停泊地は捕鯨船自らが探そうとはしない獲物なのである。

ストークス氏[注]が1週間前にこの待ち合わせ地点(ロー湾)に着いていたことが分かった。
[注] ビーグル号の航海士かつ測量士補。この前年12月18日からホゥェール・ボートでチョノス群島北部の測量を分担してビーグル号とは別行動をとっていた。

ここの島々は、チロエと同様に主に第三紀の地層のものであり、[植生が]美しくも青々と茂っている。 森が、砂利道の上の常緑の植え込みとちょうど同じように、海岸まで下がってきている。

ここで私たちはケイレン[注]から来た丸木舟を見た。このチロエ人たちはそのみすぼらしいボートでチョノス諸島とチロエを隔てる外海をこのうえなく大胆に渡ったのだ。
私はこの場所はやがて人が住むようになるだろうと思う。立派なイガイやカキが豊富にあり、野生のジャガイモが豊かに生育している。私が測ったジャガイモは卵形でその長径は2インチ[5.08cm]であった。 ストークス氏とその一隊が、それらを調理して食べてみて、水っぽかったが美味しかったという。 チロエ人たちは魚を獲ることを期待していたのであるが、沢山のラッコがいることを見ればそれは事実であろう。
[注] チロエ島の東部やや南寄りにある。

投錨地から見るコルディジェラ[アンデス山脈]の雪をかぶった大きな錐体4つの素晴らしい眺望を私たちは楽しんだ。 最も北にあるのは頂上が平らな火山で、次に"名高いコルコバド"が来る[注]。 山脈それ自体はほとんど水平線の下に隠れんばかりである。
[注] 冒頭画像参照。ただし写真はチロエからのもの。

[地図] ロー湾(Port Low; Lowes harbour; おそらく長く続いた航海でのクロノメーターの精度の問題があり、実際は示された経度(Capt. R.FitzRoy)より明らかにもう少し東寄り)..

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[画像] ロー湾衛星画像..
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[天候]1835年1月7日正午の天候:
西微南の風、風力2、青空、雲、気温摂氏12.2度、水温摂氏13.06度。

[日記原文]
7th
We ran on during the night. The French ship most pertinaciously followed us; she supposed we were making for some Harbor; & a harbor on this lee-shore is a prize which a Whaler dare not herself look for. We found Mr Stokes had arrived a week before at this (Lowes Harbor) our rendevous[sic]. — The islands here are chiefly of the same Tertiary formation as at Chiloe, & are beautifully luxuriant: The woods come down to the beach in precisely [the] same manner as an evergreen shrubbery over a gravel walk. We found here a Periagua from Caylen; the Chilotans had most adventurously crossed in their miserable boat the open space of the sea which separates Chonos from Chiloe. — I think this place will soon be inhabited; there is a great abundance of fine muscles[sic] & oysters; wild potatoes grow in plenty, one which I measured was oval, & its longest diameter two inches. — Mr Stokes & his party cooked & ate them & found them watery but good. — The Chilotans expected to catch fish, & the very great numbers of sea-otters shows to be the case.

We enjoyed from the anchorage a splendid view of four of the great snowy cones of the Cordilleras; the most Northern is the flat-topped Volcano, & next to this comes "el famoso Corcovado". — The range itself is almost hidden beneath the horizon.

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["ダーウィンの日記(III)"について]
ここで扱っているのはダーウィンがビーグル号で航海に出ている時期の日記です。訳文は私的な研究目的に供するだけの仮のものです。普通は全文を訳します。また、ダーウィンが日記を書いた当時の世界観を出来るだけそのままにして読む事を念頭に置きますので、若干の用語の注釈を除いては、現代的観点からの注釈は控え気味にしてあります。
[日記原典] Charles Darwin's Beagle Diary ed. by R.D.Keynes, Cambridge U.P., 1988.
1835年1月1日より前のダーウィンの日記へはページ左のリンク集が入り口となります。

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アマデウス

雪で覆われたコルコバド火山(標高2,300m)とアンデス山脈。。。
雄大で、癒される景観ですね~☆

by アマデウス (2009-04-11 05:58) 

さとふみ

このあたりの景観に関して、ダーウィンはコルコバド火山とアンデス山脈にかなり感銘を受けたようで、後にチロエを去って北上するにあたって、

"チロエでのこの壮大なコルディジェラへの別れの眺めを長く覚えていることを望む(I hope it will be long before I forget this farewell view of the magnificent Cordilleras of Chiloe)" (1月27日付け)

と書いています。
by さとふみ (2009-04-11 09:31) 

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